こちらは「【連載企画】すぐ使えるマーケティング実務ノウハウ20選」の1回目の記事です。
連載企画の概要はこちらの記事をご覧ください。
今回は「マーケティングの基本的な仕組み」がテーマです。
マーケティングをニューノーマルに対応させていくための考え方も提案していきます。
マーケティングの考え方に関する解説記事は他にもたくさんありますが、こちらの記事は「実務で使える情報であること」と「内容がわかりやすいこと」にこだわって書いています。
皆様のマーケティングプランニングに役立つことができるとうれしいです。
どうぞ、最後までご覧ください。
この記事の進行キャラクター
今回も恒例の4つのキャラクターで楽しく進行していきます。
どうぞよろしくお願いします。
記事の信頼性
この記事は、実務経験30年のベテランマーケターで、広告代理店でマーケティング部長まで経験し、現在はマーケターと工場経営の二刀流で活動しているももとらが書いています。
机上の論理に留まること無く、実際に自分の事業で実行したマーケティングの諸活動などの「現場のノウハウ」もご紹介できると思います。
また、広告代理店では若手社員向けのマーケティング研修を担当しておりましたので、初心者の方にもわかりやすくお伝えできると思います。
読者の悩み
マーケティング関連の副業に興味を持っているサイです。
マーケティングの仕組みについていろいろ調べたのですが、難しいモノが多くてイマイチ理解できません。
初心者にわかりやすく解説してくだサイ!!
サイの先輩のシカです。
マーケティング関係で起業しようと頑張っています。
先日、営業先に自主提案を持ち込んだところ「いまいち時流に合っていないよね。」とNGを食らってしまいました。
ニューノーマルを意識してマーケティングをアップデートしたいのですがどうせれば良いですかね?
おまかせください。
皆さんのご相談にお応えします。
この記事でお伝えしたいこと
- マーケティングの基本的な仕組みについて実務的な視点からわかりやすく解説します。
- ニューノーマルに対応していくためのチェックポイントを紹介します。
この記事のメリット
この記事で以下のメリットを体感していただけると思います。
- 日常業務で幅広いマーケティングの知識とノウハウを持った「できるマーケティング人材」として社内で一目置かれ、仕事の成果が出しやすくなり、業績評価のアップに役立つでしょう。
- マーケティングの論理思考やプレゼン技術が身に付き、会議、プレゼン、面談などでライバルから一歩抜きんでることができ、昇格の確率を高めることに役立つでしょう。
- ココナラやランサーズなどでの副業案件の獲得にも役立つでしょう。
マーケティングの基本的な仕組みとニューノーマル対応のポイント
前回の記事でマーケティングの実務的な解釈を以下のように整理しました。
「社会や未来の役に立つ」というところがポイントでした。
そしてマーケティングは「6つのジャンルの情報の集合体」という整理もしました。
ちなみに前回の記事はこちらです。
ここからはマーケテイングにおいて、これらの6つの情報がどのような仕組みで組み立てられているのかを解説していきます。
わかりやすくするために図式化してみましたので、まずは下のチャートを眺めてみてください。
なんか、わかったような感じはしますが、もう少し詳しく解説してもらえますか?
もちろんです。
それではチャートの見方から解説していきます。
【チャートの見方】
上の逆三角は社会とそれを構成するステークホルダー(関与者)、そしてそこに存在する市場を表しています。
下の三角形は、その市場に参入している企業のマーケティング活動全体を表しています。
そして上の逆三角と下の三角形のそれぞれ階層にマーケティングの構成要素となる情報がプロットされています。
マーケティングの構成要素だった6つの情報がこの上下の三角形の中にプロットされているという解釈でよいですか?
そのとおりです。
それでは上からこれらの情報について、それぞれの内容について解説していきます。
上から「グローバル社会・地域・社会変化」と「暮らし・産業・テクノロジー」、その下に「自治体、コミュニティ・生活者」、さらにその下に「市場」そして「市場機会」へとセグメントされていきます。
「グローバル社会・地域・社会変化」
意識しておくキーワードとしては、コロナ禍、SDGs、グローバル、環境、地域、人口、財政、経済、産業、医療福祉、文化などですが、特に「グローバル(アメリカと中国の動向など)」「地域(様々な地域の動向)」「変化(コロナ禍による社会統制状況や、社会のデジタル化、SDGsの取り組みなど)」を意識しておくと良いと思います。
コロナ禍、SDGs、アメリカと中国の話は毎日テレビや新聞を賑わせていますよね。
これらの話題が自分の仕事に関係するかもという目線で見ていくと関心も高まってきますね。
そうなんです。
自らどんなことが関係してくるのか探していく姿勢で情報に接することが重要なんですよね。
「暮らし・産業・テクノロジー」
「暮らし」は生活者の経済状況、暮らしのデジタル化、消費トレンドやライフスタイルの変化などを意識します。
「産業」では企業のSDGsへの取り組みと、産業のデジタル化など(次の「テクノロジー」と重複する部分もありますが)を意識しておきましょう。
「テクノロジー」ではAI、IOT、生体認証、DX、5G、セキュリティ、ブロックチェーン、クラウドコンピューティング、フィンテック、CASE、デジタルヘルス、スマートシティ、HRなど、この領域は次から次と新しいキーワードが出てきますので、まめにチェックしていくことをおススメします。
デジタルやテクノロジーは次から次と新しいカタカナの単語が出てきて追いかけるのが大変ですよね。
最初は誰もがそうですよね。
でも、知らない単語が出てきたら即グーグル検索する習慣を付けるようにしていけば、すぐに慣れちゃいますから安心してくださいね。
さて、次は社会を構成するステークホルダーを見ていきましょう。
主なステークホルダーとして「自治体」「企業」「コミュニティ」「生活者」が存在します。
「自治体」
「自治体」は日本政府と地方自治体を指します。昨今のチェックするべき動向としては「コロナ対策」「経済復興」「行政のデジタル化」などがあります。
政府の発表はその発表内容と世論の反応をあわせてチェックしておきましょう。
コロナ禍関連などは、世論によって政府の政策が覆ることもありましたもんね。
「企業」
「企業」はBtoBビジネスでは直接のターゲットであり、BtoCビジネスではライバルだったり、パートナーだったり、いずれにしても大きな関係性がありますのでチェックが必要です。
また昨今は企業のニューノーマル対応が加速していて、企業の業種業態がシフトしたり、多様化したりする現象が起きています。
そういえば「えっ、あの会社があんなことを始めたの?」という状況を良くみかけますよね。
そうですね。ですから一定の業種に限定することなく、多様な企業の動向を幅広い目線でチェックしておくことが重要だと思います。
特にアメリカと中国のグローバルプラットフォーマーと呼ばれるIT企業である「GAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)」と「BAT(百度<バイドゥ>、阿里巴巴集団<アリババ>、騰訊<テンセント>)」は膨大なユーザー数と新しいテクノロジーを駆使して多様な業種に参入し、次々と新しいビジネスモデルを構築していますから、その動向はしっかりチェックしておくべきでしょう。
「コミュニティ」
「コミュニティ」は、地域、教育、福祉、ジェンダー、世代、LGBT、ビジネス、ボランティア、趣味スポーツなどの多種多様なグループを指し、生活者の意識や行動に影響力を及ぼしています。
特に社会のデジタル化により、オンラインコミュニティ(オンラインサロン、SNSコミュニティなど)が増加していて、その影響力が高まっています。
そうそう、オンラインサロンはすごく流行していますね。
そうですね。情報収集もかねて興味のあるジャンルのオンラインサロンに入っておくのも良いと思いますよ。
「生活者」
BtoCやBtoBtoCのビジネスではエンドユーザーになります。
生活者の動向を見ていくには以下のチェックポイントがあります。
生活や行動の価値観、経済状況、家族構成、職業、学歴、趣味、交際、衣食住、移動、情報行動、消費行動、商品サービス選択重視点、ITリテラシー、生活満足度、ブランド関心度、SDGs関心度などがそれに該当します。
ニューノーマルに対応していくための視点で重要なことは、「新しい生活様式で生活者がどう変わっていくのか」という変化の兆しをキャッチすることだと思います。
上記で様々なチェックポイントを紹介しましたが、これらがニューノーマル以前と以後でどのように変化していくのかを意識して考察していくと、いろんな仮説を想像することができておもしろいと思います。
次は市場の解説です。
市場については様々な解釈がされていますが、それを紐解いていると長くなりますので、ここでは次のように整理していきます。
「市場」
市場とは「必要性や欲求を満足させるために商品やサービスを買おうとする人と、商品やサービスを売るためにマーケティング活動をする企業が、相互に取引をする状況や場所」を表しています。
市場は、その取引を行う生活者や企業によって、実に多彩で多種多様な形態があり、生まれて、成長し、消えていったり、その姿を変化させて生き残ったりしています。
また市場には、既に取引が行われている「顕在的な市場」と、これまでにない新たな取引が創造される可能性を持つ「潜在的な市場」という捉え方があります。
特にニューノーマルにシフトしている現在は、たくさんの可能性に満ちた「潜在的な市場」の芽が出てきているのではないでしょうか! その目をうまく見つけられると良いですよね。
他にも、市場の規模が拡大している「成長市場」、その規模が安定したピークの状況を維持している「成熟市場」、その規模が縮小している「縮小(衰退)市場」などの捉え方や、ライバルが多くて競争が熾烈な「レッドオーシャン市場」、ライバルが少なくて独占の可能性が見込める「ブルーオーシャン市場」という捉え方もあります。
「レッドオーシャン」や「ブルーオーシャン」は良く耳にする単語ですね。
まだまだ多様な市場の捉え方がありますが長くなりますので、別の機会で詳しく取り上げたいと思います。
続きまして市場機会です。
「市場機会」
市場機会の解説についてもいろんな言い方がされていますが、整理すると、「市場に対して、ライバルにない自社の長所や強みを発揮できる場所や状況」と言えると思います。
もっとわかりやすく言い換えると「ターゲットと企業のマーケティング活動をダイレクトに結びつける“発見やアイデア”で、市場の競争優位や市場の創造に成功するための“勝算”」と言えます。
ん、“勝算”? ですか?
もう少しわかりやすくお話しましょう。
ここで私が素晴らしいと思う市場機会について一例を紹介します。
それは某フィットネス企業の「結果にコミット」という切り口の独自のトレーニングプログラムのお話です。
フィットネスの成長性とユーザーのニーズや不満を分析し、富裕層をターゲットに「ダイエットに保証」という「独自のサービスの選択ポイント」を提供して、「フィットネスプログラムの新しい品質、期待感、安心感」を創造した点は圧巻です。
さらにダイエットから、ゴルフ、英会話へとそのプログラムのラインナップを水平展開していくマーケティング戦略は他社の追随を許さない状況となっていますね。
なるほど、ターゲットに新しい考え方の提案を仕掛けて、独自の成功とビジネスの発展を勝ち取っていますね。
ここで言う“発見、アイデア、勝算”は、とても奥が深いお話なのでまた別の機会で詳しく掘り下げていきますね。
ここからは下の三角形について解説していきます。
こちらはある市場に参入している企業のマーケティング活動を表しています。
上から「経営戦略」と「マーケティング戦略」、その下に「マーケティング戦術」のピラミッドになっています。
「経営戦略」
経営戦略はマーケティング戦略の上位戦略で「経営ミッション」「財務」「人事」「法務」「マーケティング」「SDGs」の主に6つの経営パーツから構成されます。
経営戦略は「企業経営の司令塔」といった感じですかね?
そうですね。「司令塔」だったり、「頭脳」であったり、「総監督」だったりといろんな言い方ができますが、「企業経営全体をコントロールしていく指針となる考え方」と言った解釈で問題ないですね。
これらについてかんたんに整理していきましょう。
「経営ミッション」
「経営ミッション」は企業が社会に対して果たすべき使命や任務のことで、 「企業が社会でどういう存在で、誰に対して、どのような価値を提供する役割を担っているのか」を宣言するものです。また「経営ミッション」は「経営ビジョン」「バリュー」とあわせて、その企業の経営理念の構成要素でもあります。
「財務」
企業はヒト、モノ、カネ、情報で構成されていますが、「財務」は「カネ」のマネージメントの役割を担います。
主に企業の資金繰り、予算管理、資金調達、余裕資金の計画を実行します。
「人事」
「人事」は「ヒト」のマネージメントの役割を担います。
主に人材調達、評価制度の構築運用、給与管理、労働環境改善の計画を実行します。
「法務」
「法務」は「情報」の一部のマネージメントを担い、主に紛争を避けるための予防と紛争解決のための取り組みや、労務や株主総会・取締役会の開催運営、M&A、契約、知的財産の管理、債権回収など分野に対応します。
「マーケティング」
「マーケティング」は「ヒト・モノ・カネ・情報」に横断的に関与しながら、企業ブランド、商品サービスの企画やブランド、営業や顧客接点のマネージメント、販売、物流、広告活動、アフターサービスなどの戦略や戦術を計画し実行する役割を担います。
これらの活動すべてをマーケティングが単体で対応するというよりは、マーケティング組織がそれぞれの専門組織と連携しながら、企業のマーケティング活動全体をコーディネートしながら最適化を目指していくというイメージとなります。
企業全体とやり取りしながら、企業や商品の長所を伸ばしたり、価値を高めたりしていくということですね。
まさにコーディネーターですよね。
「SDGs」
「SDGs」は「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称で、2015年に国連サミットで採択されたもので、国連加盟193か国が2016年から2030年の15年間で達成するために掲げた目標です。企業は営利活動のみに傾注するのではなく、「企業市民の一員」として、企業それぞれが「SDGs」に貢献するべきことを計画し実行していく役割を担います。
なるほど、どれも企業を経営をするために必要不可欠なモノですね。
そうなんです。そしてこれらが相互に連携しながら企業の経営戦略が成り立っていると考えていただいて問題ないでしょう。
さて、ここからは、いよいよ「マーケティング戦略」のお話になります。
「マーケティング戦略」
マーケティング戦略は企業の中の様々な組織と連携しながら、企業のCI(コーポレートアイデンティティ)マネジメント、商品やサービスの企画開発とそのブランドマネジメント、営業や顧客接点のマネージメント、販売、物流、広告活動、アフターサービスなどの戦略や戦術を計画して実行します。
マーケティング戦略は「商品・サービス」「価格」「売場」「売り方」「データ」の主に5つの要素で構成されています。
あ、これって「4P」(プロダクト、プライス、プレイス、プロモーション)ですよね?
そうですね。「4P」はマーケティング戦略の基本的な考え方としてとても有名ですね。
ここでは「4P」に「データ」を加えています。もはや言うまでもないことですが、生活や産業にとって「デジタル化」は切っても切れないものであり、「4P」のそれぞれが「デジタルシフト」している現在は、「デジタル」が生み出し流通する膨大な「データ」を有効活用しないことはあり得ない状況なわけです。
ここでは「4P」+「データ」でマーケティング戦略を組み立てていきます。
それではこれらをかんたんに整理していきましょう。
「商品・サービス」
「商品・サービス」では主に商品企画などで関わることが多く、新商品開発や既存商品のリニューアルなどに対して、多様なデータや調査を駆使して、商品の機能や品質、提供価値の創造と革新に取り組んでいきます。
現在の商品・サービスはどのような業種であれ、インターネットと無関係ではいられませんので、デジタルをどのように取り扱うかが腕の見せどころと言えます。
また、SDGsにどうコミットしていくかも重要な視点です。
これらとあわせて物流やアフターサービスにおける価値を組み合わせ、ユーザーに支持されるブランドへ仕上げていきます。
ここでも「デジタル」と「SDGs」がキーワードなんですね。
「商品・サービス」は企業のマーケティング活動の「顔」と言っても過言ではありませんから、「デジタル」と「SDGs」をどのように取り入れて提供していくかが重要視されます。まさに腕の見せどころですね!
「価格」
「価格」はマーケティングにおいてはプライシングと呼ばれることもあります。
特に新発売や新料金プランの発表、会員価格、キャンペーンやセールの限定価格、ライバル商品対抗価格、クロスセル(関連販売・セット販売)におけるバンドル価格の設定の設定などの機会があります。
いずれも自社商品とライバル商品や代替商品の販売動向を見ながら、場合によっては価格受容性の調査なども実施しつつ、販売と収益のシミュレーションプランを作成検討しながら決定していきます。
アンケートパネルに登録していろんな企業の調査に解答していると、たまに価格受容性調査に出くわすことがありますよ。ある商品の価格を複数提示して、買っても良い価格や、高過ぎて変えない価格を解答させるような調査です。
「売場」
「売場」はECサイト(自社サイト・ECモール)、各種プラットフォーム、コールセンター、店舗(直営・フランチャイズ)、セールスマンなど多様化しており、それぞれのミックス型などもあります。
売場の設計はターゲットの情報接触行動、購買モデル、ライバルの購買導線、エリア特性などを検討しながら、ユーザーにとって最もメリットがある「購買(価値)体験導線(カスタマージャーニー)」とユーザーにとって最もメリットがある「買い場(棚割、陳列、ショールーミング、デジタルシェルフ)」を設計していきます。
「ショールーミング」や「デジタルシェルフ」の言葉は最近よく耳にしますね。これもキーワードですか?
そうですね。
ECサイトにおける商品の見せ方や販売効率を高める仕組み、そして、ECサイトとリアル店舗などを連携させる新しい形態がどんどん生まれていますから、ライバルの売場はしっかりチェックしておく必要があると思いますね。
「売り方」
「売り方」については現在では「マネタイズ」という考え方をした方がしっくりくるかもしれません。
もはやビジネスモデルの領域かもしれませんね。
例えば、フリーミアムモデル。
これはサービスを無料で提供して利用者を増やし、その利用者のボリュームをフックとして広告で稼いだり、コンテンツの一部を無料提供して購買意欲を高めてから、コンテンツの有料部分でしっかり利益を回収するモデルは有名ですね。
また、商品やサービスの話題性を高めるために特売や期間限定セールを実施してみたり、ライフスタイルや献立のプレゼンテーションの流れで関連する商品のセット販売を促進させるクロスセル。またユーザーのライフステージの変化を機会としてより上位モデルを提案し、ユーザーのステイタスを刺激するアップセルなども有名な売り方の手法です。
サブスクは誰でも聞いたことがある言葉かもしれません。
これはサブスクリプションの略語で、一定の定額料金で長期的かつ継続的に満足度を高める工夫をしながらサービスを提供して、ユーザー(利益)を囲い込む販売手法のことです。
デジタルコンテンツなどを起点に始まった販売形態ですが、最近では飲食や自動車の販売手法としても活用されています。
「フリーミアム」や「サブスク」もよく見かけるキーワードですね。
私も動画配信サービスの「サブスク」利用してます!
「売り方」は「商品・サービス」や「売場」とあわせて各社とも特に工夫するところですから、いろんな企業のやり方を勉強して参考にすると良いですよ。
「データ」
最後に「データ」です。
ここでは少し専門的な解説になります。
まずデータは主に以下の3つに分類されています。
「1st Party Data」、これは企業が自社の顧客やWEBサイト訪問者に関して収集し保有しているデータのことで、顧客の個人情報、購入履歴、サイトのアクセスログ、問い合わせデータなどが該当します。
これは企業と顧客がダイレクトにつながったデータで、かんたんに言うと「企業が自力で集めた顧客のデータ」ということになります。
「2nd Party Data」は他社の許諾を得ることで利用できる他社のファーストパーティデータのことです。たとえば系列の会社のデータを利用する場合などが該当します。この企業間で合意がなされたファーストパーティデータがセカンドパーティデータです。
「3rd Party Data」は第三者が提供するデータです。
具体的には「国や自治体が公開しているオープンデータ」、「データ収集や販売を事業としている企業から購入するデータ」となります。
さらに最近では「0Praty Data」という言葉も流通するようになりました。
「0Praty Data」は企業ののファンや優良顧客などの個人がその企業に意図的に共有するデータです。「0Praty Data」は「1st Party Data」の一種とも言えますが、「0Praty Data」は個人が意識的に自分の趣向などを共有している点が、企業が主体的に収集する「1st Party Data」との大きな違いと言えます。
次はこれらのデータをマーケティングにどのように活用していくかについてかんたんに紹介します。
- 「1st Party Data」➡自社顧客の囲い込み、クロスセル、アップセル
- 「2nd Party Data」➡ターゲットの拡大(新規顧客獲得)
- 「3rd Party Data」➡ターゲットの拡大(新規顧客獲得)
- 「1st Party Data」「2nd Party Data」×「3rd Party Data」➡分析の精度アップ
このようにデータを活用したり組み合わせたりして顧客にアプローチする手法を「データドリブンマーケティング」と言い、現状では様々な企業で採用されています。
「データドリブン」ですか。難しそう...
マーケティングの「デジタルシフト」と、暮らしや産業の「ニューノーマル化」に対応していくためには、これも避けて通れない分野ですね。いろんな切り口のデータを活用して独自のデータベースを作ったり、それを使って販売やプロモーション(広告や販売促進)を実行したりするわけですが、データの扱いに慣れてくると、データを組み合わせる独自の発想やアイデアからユニークな仮説を作って検証するというプロセスがおもしろくてたまらないと言うマーケターもいるんですよ。こちらは、また、別の機会に紹介しますね。
最後に「マーケティング戦術」について解説していきます。
「マーケティング戦術」
マーケティング戦略で決定した「価値」をどう提供するか「実行計画」に展開し、「計画の実行」「進捗管理」「効果測定と評価」「計画の見直しなど」を一貫して実施していきます。
よく「○○マーケティング」という言葉を見かけると思いますが、これはマーケティング戦術の個別のテーマを表しています。それぞれを紹介しているとすごいボリュームになりますので、ここでは主なモノについて紹介していきたいと思います。
「WEBマーケティング」
「WEBマーケティング」はECサイトなどのWEBサイトにターゲットを"集客"して、サイト上に掲載された商品・サービスなどの購入をすべてオンライン上で行う戦術です。WEBマーケティングでは「SEO(検索エンジン最適化)」「リスティング広告」「アフィリエイト広告」「SNS広告」などを使って集客します。
そしてWEBサイトにおける「情報の見せ方」や「誘導の導線」などを工夫してWEBサイトの販売実績を上げていきます。
WEBマーケティングでは「広告別の集客数」「ページの閲覧数や滞在時間」などを細かく把握することができます。それらのデータを活用して「PDCA」を回しながら、集客や販売の実績を上げていく方法と言えます。
WEBサイトに特化しているからWEBマーケティングなんですね?
そうです!今やWEBマーケティングはマーケティング戦術の主流とも言えますね。
「WEBマーケティングとは何か?」についてはこちらの記事でわかりやすく解説しています。
あわせてご覧ください。
「デジタルマーケティング」
デジタルマーケティングはその言葉からするとWEBマーケティングと同じように解釈しがちです。
しかし、これは別な意味を持ちますので注意が必要です!
デジタルマーケティングはWEBマーケティングを包括する戦術と捉えると良いでしょう。
デジタルマーケティングではWEBマーケティングに加えて、ターゲットがデジタルで行動するあらゆる顧客接点をカバーしていて、一例をあげると以下のモノがあります。
デジタルマーケティングは、より多くの顧客接点でターゲットと接触できるため、ターゲットとの接触機会や頻度を増やしたり、より多くのターゲットのデータの蓄積して1人1人のニーズに合った情報を発信することが可能となります。
まさにデジタルですね!
最近よく見かける、繁華街の人出の状況や混雑具合い(人流)を表すデータなどもデジタルマーケティングの一例ですね。
マーケティングオートメーションは、主にBtoBのマーケティングで、WEBサイトのコンテンツ閲覧者から見込み顧客のリード情報を取得して、セミナーや商品紹介のメールを自動案内するなどの、すべてをデジタルで管理するマーケティングツールのことを表しています。
他にもデジタルマーケティングには多様な戦術の仕掛けが存在します。
これについても別の機会に詳しく紹介していこうと思います。
「コンテンツマーケティング」
コンテンツマーケティングは、ブログや動画サイトに、ユーザーに対して有用性の高いコンテンツを継続的に発信して、ユーザーの興味と購買意欲を高めて販売につなげていく戦術です。
主に「集客」「商品・サービスの説明」「ユーザーの啓蒙とファン育成」の役割を担います。
コンテンツ作者の権威性が高くユーザーにとって役に立つモノであれば、ユーザー自らがSNSで拡散することも期待でき、想定外のバズ(クチコミ)効果をあげることができます。
また、発信したコンテンツには「ストック(蓄積)効果」があり、コンテンツの価値が損なわれない限りマーケティングに貢献し続けます。
さらにコンテンツを増やせば増やすほどターゲットとの接触機会が増え、コスト効率が良くなるというメリットもあります。
「ストック効果」もニューノーマル対応のキーワードですか?
そうですね。これからは、これまで以上に在宅時間や個人で過ごす時間が増えていきますから、WEB上でのターゲット接触機会がさらに増えていきます。長期間にわたって何度も機能するコンテンツを保有していくということは、まさにニューノーマル対応に十分に役立つモノだと思います。
「SNSマーケティング」
「SNSマーケティング」はFacebook、Instagram、Twitter、YouTube、LINE、TiktokなどのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を活用してターゲットにリーチして、商品・サービスの魅力を伝えたり、購買を促進していくデジタルマーケティングのひとつです。
具体的には「SNSアカウント」「SNS広告」「SNSキャンペーン」「インフルエンサー(バズ)マーケティング」「ソーシャルリスニング」などの方法があります。
総務省の「令和元年通信利用動向調査」によるとソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の利用率は全体で約7割弱と言われています。
SNSはターゲットに近いメディアであることから、認知度向上、集客、購入促進、マーケティングリサーチなど幅広く活用されています。
ひとり時間が増えているから、SNSを有効活用しない手はないですね!
そうですね。SNSも「ニューノーマル対応」の重要なキーワードのひとつですね。
「その他のマーケティング戦術」
その他、テレビショッピング、ダイレクトメール、電話、eメールなどを活用して、ターゲットと直接コミュニケーションを取り、商品・サービスの購入を促進させる「ダイレクトマーケティング」や、小売業(百貨店、スーパー、コンビニエンスストア、ドラッグストア、家電量販店など)や、学習塾、保育園、フィットネスクラブなど、営業する地域ごとの特性にあわせて(商圏分析して)マーケティング活動を展開する「エリアマーケティング」などが有名です。
いろいろありますね。
そう、マーケティング戦術はまさに多種多様なんです。
目的、課題によって使い分けていく選択眼を養っていくことも重要ですよ。
他にもたくさんのマーケティング戦術がありますが、長くなってしましますので、別の機会に詳しく掘り下げて紹介したいと思います。
まとめ
ここまでマーケティングの基本的な仕組みと、ニューノーマルに対応していくためのチェックポイントについて解説してきました。
ここでは、この記事のまとめとして、これからマーケティング戦略を検討していくための実務的なちょっとしたコツについて紹介したいと思います。
マーケティング戦略を検討する時のちょっとしたコツ
まず、社会、産業、暮らし、そして生活者を捉えていく、自分自身の意識そのものをアップデートしていきましょう。
具体的にはどうアップデートしたらよいですかね?
はい。具体的には「変化することを前提」にモノコトを捉えるようにしてください。
意識そのものをアップデート
- 「また想定外の変化が起こる」前提でモノコトを見ていくべし。
これまでの企業のマーケティング活動はその事業計画や想定される個別課題に対して、様々なデータの積み上げでマーケティング戦略を立案し、それに基づいてマーケティング戦術を実行してきました。
様々なデータを分析して、オリジナリティの高いマーケティングの打ち手を考え出すことができるのはマーケターとして快感でもありますが、そのデータの前提が常に変化していくということになると、過去データと心中することとなるため、ある意味危険であると言わざるを得ません。
とは言っても、先々どういう変化が起こるかはわかりませんよね?
はい。誰しも未来を正確に予測することはできませんから、ここでは「想定外のことが起こることもある」ということを意識を持って、未知の想定外の事態に対して「心と情報の準備」をしていくことで良いと思います。
う~ん、わかったようなわからないような...。
具体的には「今、現在の旬の情報」をSNSなどを活用してリアルタイムでキャッチ、取捨選択、ストックを繰り返して、独自のマーケティング情報の引き出し(データベース)をつくることをおススメします。そして、様々なデータと、独自のマーケティングの引き出しの両方を活用して、自分なりの未来の仮説を考え続けることが重要だと思います。
想定外に対する「心と情報の準備」
- 独自のマーケティング情報の引き出しを持つべし。
- 自分なりの未来の仮説を考え続けるべし。
リアルタイムでいろんな情報を集めてみて、それらが次にどんなふう変化していくのか仮説を立ててみるっていうことでよいですかね?
そうですね。具体的なアクションで言うと、PCやスマートフォンのメモ機能を活用して「仮説メモ」を書き溜める習慣を付けると良いですよ。 何気なく書いた仮説メモがいつの日か思わぬ形で日の目を見るなんてこともありますから。
ケーススタディとして、私なりの仮説を紹介しましょう。
テーマは「生活者の深層にある心の準備(変化に慣れてきたイマドキの生活者)」です。
これは、メディアのコロナ禍報道に対するユーザーの反応を集めていて感じたことですが、現在の生活者は「次に起きるかもしれない社会変化に対して、ある程度心の準備ができてしまっていて、想定外の事態とか、新しい価値観、行動、消費形態を受け入れるための心理的スペース(慣れ)が自然に準備できているのではないか」という仮説です。
もっと言うと、ニューノーマルやデジタルという言葉を聞くたびに、「もはや、生活が変化することは避けられないことで、この先どのように自分の生活に取り入れていくのかが課題であるという考え方が生活者に定着し始めている。」のではないかと言うことです。
これはコロナ禍発生以来の1年半を思い返してみて、ご自身の生活実感と照らし合わせてみても思い当たる節があるのではないでしょうか。
生活者の心の片隅に新しいことを受け入れる心の準備ができているとすれば、現在の状況をむしろチャンスと捉えることもできると思います。
例えば、ホテルやカラオケ店をリモートワーク向けにアレンジした「ワーキングスペースの提供サービス」や観光とリモートワークをアレンジした「ワーケーションサービス」などですが、これらはコロナ禍で売上が減少したことに対する苦肉の策の打ち手と受け取られがちですが、実は「他の人とは違うリモートワーク」をして、それをSNSで発信して自己承認欲求を満たそうとするイノベーターをターゲットとした、新手の業態拡大施策(新たな収益開発)だとも考えられます。
オフィスではなく、自宅でもない、第三の「働く場」として、既存の「コ・ワーキングスペース」にはない、「ラグジュアリー」や「癒しと心の遊び」という価値を組み合わせた「新しい働き方、新しい仕事空間、ワークスタイルの提案」ということですね。
なるほど、コロナ禍という想定外だから打ち出せた新サービスということですな。
そうですね。これは更にいろんな価値を組み合わせることで、まだまだ発展の伸びしろがあるような気がしています。
実は私も「田舎の古民家や土蔵」を活用した「ワーキングスペース開発プラン」を温めているところです。こちらはまた別の機会に紹介させていただきたいと思います。
さて、このように変動し続けていくニューノーマルの時代に対して、マーケティングをうまく対応させていくことについてお話してきましたが、この記事が少しでも読者の皆様のお役に立てばうれしい限りです。
ももとらサロンでは起業や副業に役立つマーケティングのノウハウや事例などをどんどん発信していきます。
また、記事を投稿した際にももとらサロンのツイッターでお知らせしていきますので、ぜひぜひフォローをお願いします。